「今の顔、怒ってる顔、悲しい顔、嬉しい顔、さあどれ?」 千佳はお構いなしに続けている。 晃さんは、そんな千佳に一瞥をくれるだけで、また本に目を落とした。 「良いんじゃないの、好きにさせれば」 「…嬉しい顔?」 太一が言った。 「当たり!なんだ、見えるんじゃん」 「偶然だろ」 「えー、じゃあ、太一に良いものあげる」 千佳がそう言って、服の中から、漫画を取り出した。