-藍斗side-



「じゃあ、ここ借りるということでよろしいですか?」


「はい、お願いします」


「敷金礼金はですね…」

夜、営業時間ギリギリで駆け込んだ不動産屋


怪訝そうな顔をしていた店員も、俺が笑顔を向けるとイチコロですぐさま物件を用意してくれた


こういうとき、顔がいいと便利だな


目の前で書類を広げる女の話なんて聞かずに俺は遠くを見つめた


『大変なのは桃果ちゃんだよ』


陽の言葉がこだまする


どういう意味かなんてわからなかった、その時は