こんな店に2ヶ月も通っていたなんて、具流目は完全に裏切られたと思った。


まるで、長年付き合っていた女性に、いざプロポーズしようと思った矢先に「実は私、ニューハーフだったの♪」とカミングアウトされた位、裏切られた感じがした。


「チキショー!俺はこの店に2ヶ月も通って来たんだぞ!」


「それはそれは、いつも御愛顧いただきありがとうございます」


「ブログにだって書いてたんだぞ!」


「ああ、それ読んだ事がありますよ!すごく誉めていただいて♪」


何を言っても全く動じないこの店のオーナー。


具流目は悔しくて仕方がない。


「くそっ!こんな店もう二度と来ないからな!」


捨て台詞を吐き捨て、とうとう具流目は何も料理を注文する事無く、レストラン クイ・ダ・オーレをあとにして行った。


そんな具流目の後ろ姿を、オーナーは少し寂しそうな目をして見送っていた。



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