「いやあ、お気付きになられましたか。秋のイメージに合わせて今月からメニューのデザインを一新させていただきました♪」


「自慢するな!デザインの事言ってんじゃね~よっ!」


「えっ、違いましたか?」


「この料理名の途中に入っている
『?』の事を言っているんだ!」


このメニューを目にした時の具流目の失望といったら無い。


《松阪牛?のサーロインステーキ》
というのはすなわち……
ひょっとして、松阪牛? のサーロインステーキ


なんて意味にも解釈出来るのだ。


これでは料理の素材がどこのものなのか、分かったものでは無い。


『ブルータス、お前もか!』


そのメニューを見た瞬間、具流目はシェークスピアの名台詞を店内で思わず叫びそうになった位である。


こんな不正は徹底的に追及しなければならない。


「おい、どうなんだオーナー!」


具流目に詰め寄られたオーナーは、顎に手を当て暫く沈黙を装っていたが、やがてこんな答えを返して来た。


「ハテナ……う~ん。パソコンで文字入力した際の文字化けじゃないでしょうかね?あまりお気になさらないで……」


「気にならない訳ね~だろっ!
こんな都合のいいところだけ文字化けするかっ!」


「単なる誤表記ですよ♪」


「何が誤表記だ!これは悪質な食材偽装だ!違うか!」


「そんな証拠はどこにも無い。
困りますね、めったな事をおっしゃられては」


あくまでシラを切るオーナー。
せめて「申し訳ございませんでした」と謝罪するのならまだしも、このレストランがここまで悪質だとは思わなかった。



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