「お前さあ、本当キモい。クラス一緒とか最悪だし」

「な、まじ有り得ない。てか同じ空気吸いたくねぇし」

無駄に良い聴力をフルに働かせて、会話を聴く。彼女に浴びせる悪口雑言は、聞くに耐えない物だ。俯いて何も言い返さない彼女。その姿は余りにも哀れで。

「最悪…」

正義感が強い俺はいたたまれなくなり、席を立つ。向うは勿論あの女達。

「おい、お前等!」

低く威嚇したつもりだが、案外小さく高い自分の声に情けないと思った。しかし女達はすぐにこちらを振り向き、俺をキツく睨む。

「んだよ、男子には関係ないだろ」

「良かったねー、上原さん。王子様が助けに来たみたいよ」

「王子!そんな柄じゃねぇだろ、こいつ」

甲高い笑い声は耳によく響く。殴りたいような衝動に駆られたが、俺の頭は冷えて意外と冷静だ。

「俺は王子とかじゃないけど、ただ苛めとか嫌いなだけだよ。上原さん、何もしてないだろ。早く散れよ」

女達は一瞬怯んだようにこちらを一瞥してから、口々に俺や彼女を罵倒し、立ち去った。