「ありがとうマサト。私ちゃんと言ってみる」



そう言って電話を切ったのはコウキを知り合ってから数ヶ月の日。



やっと……やっと分かった。



心に宿った寂しさの影はどんどんと膨れ上がるばかりだったけど、コウキとの関係だけは断ち切らなきゃ……そう思えた。



だから……。



明け方、お店のラスト。暗闇を駆け抜けて寄ってくるコウキ。



「あやがマジで好き」



いつもの様に酔っ払い、廻してくる手を振り切った。



「あや?」



階段を駆け上がると朝日が眩しい。もう何度、ここから朝日を眺めただろう。



「こんなの付き合ってるって言えないよ。別れて?」



息を吸い込み一気に言う。そうじゃないと、また甘い言葉に流されそうだったから。



「どうしたのー?」



いつものほっぺにちゅー。



「嫌っ!!」



それを拒否した私をコウキは一瞥すると、今度は……今までに見た事も無いような怖い、怖い顔をしてぎろりと睨みつけた。