「あー良かった、立ち止まってくれて。俺キャッチって苦手で……」
そう言うと、その男はまるで子供のような笑顔で、顔をくしゃりと崩した。
ホストには珍しくメガネをかけている。グレーのスーツを営業前だからか少し着崩し、黒くて、長めの……サラサラの髪を揺らして
「ライラって店で働いてるマサトって言います。良かったら……」
そう言って名刺を差し出した。
顔立ちはもちろん丸顔に優しそうな瞳、大きな口、そして……他の、そこら辺を歩いているホストとは違って大人しそうで礼儀がある所。
ケンに……近すぎる。
私は、衝動的にマサトにも連絡先を教えた。
この世界からまだ抜けられるほど私が強くないのなら、同じ寂しい心を埋めてくれるんだったらこの人がいい。
マサトの澄んだ瞳を見つめながら、そう……思った。