その日から井上はあんまりアタシと話さなくなった。
と、言うよりも避けられている感じだった。
今のアタシの記憶によると、なんだけど。

ていうかアタシなんで井上の事気にしてるんだろう…
諦めたって言うか…断ち切ったはずだったんだけど……
あぁ!!もう馬鹿馬鹿馬鹿っ!!
何で違う人の事考えるんだろうなー…

その日はトイレ掃除だった。
男女関係なくお互いのトイレに入るので嫌だった。
雄太と一緒の班でアタシと雄太と桜が一緒に女子トイレと掃除していた。

「メンドクサイね…」

桜がタワシで蛇口を擦りながら言う。
アタシはただ「そうだね。」と言って苦笑いした。
雄太の方がもっと嫌だろうな。
男子なのに女子トイレを掃除するなんて。

「あ、ここ紙きれてる。国枝!保健室に取りに行って来てー」

雄太が叫んで、桜は「分かったー」と言って取りに行ってしまった。
…何か嫌な雰囲気。
生憎、隣の男子トイレには井上がいる。
話そうと思えば話せるけど、心のどこかに井上を気にしている自分がいて、話せなかった。

「そ…ら?」

雄太が顔を覗き込む。
全く気付かなかった…相当ぼぉっとしていたのだろうか。