拓也のすべてが私を見過ごしているみたいだった。


「拓也…っ」


「由紀…愛してる」


絡みあった手はとても複雑で


それでもしっかりと握られていて離れることはなかった。


私は何度も意識を手放しかけるも


それは耳元で囁かれる拓也の声で呼びもどされる。


「由紀」


偽りの愛と知っていながらも拓也は私の名前を愛しそうに呼ぶ。