「はあ!?やったじゃん!!でかした!!」
琴子のあげた大声に、周りの目が集中する。

「琴ちゃん…、落ち着いて!」
ここは食堂。奏は椅子から立ち上がった琴子の肩を押さえて座らせる。

「どうしよう!!」

「どうしようってあんた、成行きに任せるしかないじゃん?」
曖昧な返事をする親友に、奏のお箸を持つ手が震える。

「き、緊張で、ててて、手が…まだこんなに震えてるんだけど!」
顔までもが青白くなっている奏を、琴子はある意味不憫に思った。

「あのさあ、こんなチャンス必死でしがみつかなきゃ、これからやってけないよ?もう『純情です』なんて顔してちゃダメ!ライバルだっていっぱいいるんだよ?ここは一気に引き離さなきゃね~」
うどんを頬張って、一人でうんうんと頷く。

「琴ちゃんてば、ほんと人事…」
奏はお弁当を横にずらして机に突っ伏す。

「ま、とりあえず楽しんできな。それが一番早い」

「え?なんで?」
(楽しくなって自然に満面の笑顔が出ればさすがにアイツもイチコロだろうからねー)
そんなことを本人に言うわけにもいかず、琴子はただ意地悪そうに笑うだけだった。