――初恋は、実らない?
それでも、かまわないよ…――
「奏!次、移動」
「わかった!」
知らせてくれた友達に笑いかけて、教科書を準備する。
三崎 奏(みさき かなで)
学校で一番かわいいと評判の女の子。
本人は天然で、そんなことこれっぽっちも理解していないのだが。
机の中から教科書を取り出すと、奏は少し悲しそうな顔をする。
教科書には、「死ね」や「調子にのんな!」などという暴言が書かれている。
「またかあ…」
学校で一番かわいいと言われるだけあって
女子からの妬みの対象となることも少なくはない。
大抵は、人気のある男子から好意を寄せられたときに起こる。
本人はまったく気づいてもおらず、告白を受けたわけでもない。
ただの噂の段階でも
彼女が罵倒される理由になってしまうのだ。
奏は静かにため息を吐く。
こんなことが何度も繰り返され
慣れたものであっても、心は沈んでしまう。
「なんなんだろ…」
彼女の所有物にいたずらされる理由すらも
本人には分かっていないのだ。