「ずっりー!!なんでデートすることになったの?」
先ほどの颯とは対照的に、興味津々な様子の正樹。
颯はざっと説明した。

「ああ…。なんかその子軽くいじめられてるみたいなんだよね。教科書に悪口書かれてんの一回見たことあったから確かめようと思って。実験室で席、隣だからさ。わざと教科書入れ替えてみたらやっぱ俺の教科書に落書きされてんの。そんで入れ替わってることその子に言ったら超困ってたからお詫びになんか奢ってって誘った」
挙動不審だった奏を思い出して、颯はククッと笑った。
そんな彼を正樹は不思議そうに見つめる。

「珍しいこともあんのな。…でも自分の教科書犠牲にする必要なくね?」
そう言った正樹に、にやりと笑いかける。

「…おそろいじゃん?」

「はあ?落書き教科書が?意味わかんねー」
颯は頭をかく。

「うるせえ。言っただろ?ほっとけないって。なんかやっちまったの。別に意味はねえよ」

「…好きなわけ?その子のこと」
その言葉に、眉がピクリと動く。睨むように正樹を見上げた。

「…別にそんな対象じゃねえよ」
それだけ言って踵を返して去って行った。

「そんな怒んなくてもさー。…てか超可愛い子って誰!?」
そう声を上げた正樹を、すれ違う生徒たちは怪訝そうに見て行った。