それに今までの私の境遇をこの人に言ったところで別に何かが変わるわけでもない。
「何かあったみたいだね。」
あなたに何が分かる?
「僕でよかったら話してよ。」
あなたに何ができる?
話したところで何が変わるの?
でも…
一番疑問なのは…
「どうして泣いてるの?」
私の目からこぼれ落ちる涙。
止まることなく流れ続ける涙。
いつのまにか助けを求めている私。
周りの目も気にならないほどに取り乱している私だ。
こんなに取り乱している私とは反対に余裕の表情でニコニコ笑っている彼。
「僕が助けてあげるよ。」
確信はない。
だけど彼なら私を助けてくれると思った。
眠らない町、繁華街。
そこで私は1匹の綺麗な猫に出会いました。
少しの間、私は彼の前で泣きじゃくっていた。
それを見て同情の言葉をかけることもなく、ただ微笑んでいる彼になぜか安心感を抱いた。
数分後、正気に戻った私は周りを見渡す。
まさかの道端で大号泣してしまった私。
顔から火が出るほど恥ずかしい。
一人恥ずかしさに悶えている私に彼は言った。
「とりあえず帰ろっかな。僕寒いの嫌だし。」
「え?」
置いてきぼりにしないで…
一人は嫌だよ…
「早く立って。」
「……?」
「君も一緒だよ。」
そう言って私の手を取った彼はどんどん歩いていく。
知らない人に手を引かれて歩いている。
だけどなぜか不思議と恐怖は感じられない。
それは彼が醸し出している雰囲気から読み取れる。
歩き出して少し経つと私達は1つのアパートの前で立ち止まった。
「ここが僕の家だよ。」
こじんまりとしたアパートだけどとても綺麗だ。
白くて清潔感がある。
すると彼は私の手を引いてそのアパートの右から2番目の部屋に入っていく。
「ただいま~。」
鍵は掛かっていなかった。
ということは親とかいるのかな。
いたらどう説明するんだろう。
友達でもなければ彼女でもないのに。
中は意外に広く廊下を少し進むとリビングらしき部屋の前まで来た。
しかし彼は何も躊躇する事なくそのドアを開けた。
「帰ったよ。ほら、君も入って。」
「あ、はい。お邪魔します。」
私は恐る恐る部屋に入った。
そしてその部屋を見た途端、私は絶句した。
赤、金、銀…
彩りどりの髪型。
中にいるのは3人の不良?っぽい人。
「おかえり~。」
そう言って振り返った金色の髪の人と目が合った。
「え?」
驚いたように呟く金色の彼。
まぁ当然の反応だろう。