｢なおちゃーん。待ってー｣

春の薫りがした。ふわふわしたほんの少し茶が交じる髪からだろうか。

はあはあ、と息を切らして呼吸を治す。

｢なおちゃん足早いよ…。あ、原田君！あとは…誰ですか？｣

子リスのようにおずおずとしている。

パッチリした目、細すぎない眉、逆に細い四肢。

そんな第一印象の思考に加えるべき名前を遠藤さんが教えてくれた。

｢絵美里が遅いの。元テニス部だったなんて思えないわよ？｣

｢うぅ……っ｣

俺はたまらず声を出した。
｢あ、あの……｣

｢この子は平泉絵美里。あたしの友達。ものすっごいMだから弄ってあげてね｣

はは…と情けない笑いが出てしまった。