家に着くとすぐさまメールを打った。

気持ち悪がられないように一字一字慎重に、さらに何度も読み返した。

『アドレス教えてくれてありがとう。今日は楽しかったよ。今度また話せたら良いなと思う。これからよろしく』

適度な絵文字の使用。キザじゃない文章。あとは……。

「よし!完璧だ!」

俺の親指がじわじわ送信ボタンへと移動していく。

触れて、ちょっと離れて一息つく。

メール一つ送るのにここまで戸惑うのは初めてだった。

しかし覚悟を決めた。

えいっ。

少し沈黙があって、閉じた目蓋を開く。

『送信されました』

押した。やっと押せたんだ。

俺はこの画面をずっと眺めていた。アダムよ、イブよ、キリストよ。どうか彼女にしっかり届くよう何とかしてくれ。