なら好都合だ。話すことを話してやろうと思った。


夕日に背を向けて俺と平泉さんの影の平行線が映し出されている。

俺は無言で今に浸っていた。

向こうも俯き気味に自転車を押している。

「あ、私こっちだから……」

突然の発言がそれだった。

何かしなければ。焦る俺。進展が無い。どうすれば……。
「アドレスを教えてくれ」

勝手に言葉が出た。俺は波に乗るように続けた。

「ほら、今後もしかしたら何か連絡しなきゃいけないことあるかもしれないし」

うまいこと誤魔化すことが出来たかは知らないが、喜ぶべき返事が返る。

「いいよ。赤外線準備して?」

「あ、うん」

こうしてアドレスを手に入れた。

この日から俺が彼女に対する気持ちが変わっていった。