「マラソン」

俺の言葉に軽くビクッとして振り向く。

「苦手そうだな。息切れしてたし」

やはり高気圧は高気圧であった。雲一つ無い晴れという笑みを作り出す。

「うん、嫌いじゃないけど苦手なの。評定も体育がいつも足引っ張っちゃって」

「でもね、絵美里は中学の時はテニス部だったんだよ」

スケール何百億分の一の太陽が割り込んでくる。

「あ、なおちゃんっ…。恥ずかしいから止めてよぉ…。今は帰宅部だからね」

テニスのユニフォームを着た彼女を想像してみると、スマッシュを打つ姿が何げに似合っていて不思議と納得した。

ただの変体妄想家の意見にしか感じられないが、ここは一つ置いておこうと思う。

眠りから覚めたように、ふと我に返ると、遠藤さんのにやけながら覗き込む顔があった。

「あ、今絶対想像してたでしょ?」

「しっ、してないよ…」

なんと心の髄まで読む人なんだろうかと恐れ入った。