魔王は何故かするすると私の髪に触れて遊んでいる。
「……懸賞金を貰うためです。」
「あぁ、あれね。」
何か納得したような魔王は、ほうほうと私を見る。
「なぁ、俺の首で金もらうより俺と世界を見に行こう」
___世界、
そそる響きに意識を持ってかれるけど、踏ん張って
「家があるんですっ!」
「……家ねぇ」
「そうですよっ!」
「俺と一緒に世界を旅したほうが金貯まると思うぞ?」
あっけらかんと言われて。
一瞬だけ静止する。
「………はい?」
「俺の首で一発稼ぐよりも、もっと確実でいい稼ぎ方あるんだけど?」
一瞬だけ魔王が天使に見えたのは気のせいだ。
私の家はド貧乏ではないけれど子供が多いためにこれからお金が必要になってくる。
その為に、一時もはやく国軍に入隊するために訓練をしているのだが………。
下っ端で入隊するまでにはあと二年かかる。
その間の学費やその他諸々合わせても家計が火の車になるのは目に見えている。
だから、こうして懸賞金を稼ぎにきたのだが………。
「…………」
「一晩、ゆっくり考えろよ。ほら、もう月がでてる。」
よっこいしょっと立ち上がった魔王がもうすでに月のでている空を見上げて指差す。
オレンジ色に光る月には何かがありそうな予感。
「………お言葉に甘えて」
うさみみにぺこりんとするとうさみみもぺこりんとして
「………いえ」
何となく和んでしまう自分がいた。
「じゃあっ!ジルは俺と一緒に寝ようか!」
「おふざけは顔だけにしてください」
勇者様、魔王様とお泊まりです。