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去年も思ったけど、球技大会の雰囲気はすごい。グラウンドも体育館も、使えるところはめいっぱい使って、そこを全校生徒みんなが駆け回っているって、異様な光景だ。

楽しそうに笑いながら。悔しそうにくちびるを噛みしめながら。祈るように手のひらをぎゅっと握りしめながら。

それぞれにそれぞれのドラマがあるんだろう。たかが球技大会、されど球技大会だ。閉会式の盛り上がりといったら、めまいがするほどなんだ。


「北野さん、クラスの応援しに行かへんの?」

「ああ……うん。行こうかな」

「ほな早よ行こう! そろそろ男子のバレーが始まるころやで」


あの日以来、すっかり委員長、もとい片瀬杏子(かたせ・きょうこ)に懐かれてしまったわたしは、きょうも彼女にあちらこちらへと連れ回されていた。


イジメはたぶん、もうなくなったのだろうと思う。

正直、あの日の翌日は、どきどきしながら学校に行った。次は間違いなくわたしがターゲットになるだろうと思っていたから。

でもそんなのは杞憂で、片瀬ももう、あいつらのイジメに遭うことはなくて。

あいつらと仲良しになったわけじゃない。むしろもうしゃべりたくない。

けれど、まあ、これでよかったと思う。ていうか、あんなのの翌日からいきなり仲良くするほうがわざとらしくて気持ち悪いし。