しかし本体は敵の元にある。こちらが敵の刺客を倒したら影響があるかもしれない。

「では、母さんには本体の側に戻ってもらおう。とにかく秋穂さんを目覚めさせる事が先決だ。」
「でも頼子…。」
「敵は母さんを温存しておくだろう。こちらの弱味を直ぐに始末するとは思えない。」

冷静に戦況を判断しなくてはいけない。特に身内が二人も関わっているとなれば余計にだ。

「私も頼子の意見に賛成だな~ただ…」

頼良が言葉を濁す。

「なんやの?余計気になるやんか~。」

その様子に焦れて紗季が言うと

「みつきはねぇ、とても秋穂さんと仲良しだったんだよ~。大人しく引っ込むとは思えないんだ。」

困ったように答えた。頼子も渋い顔をしている。

「母は気の強い人でな。秋穂さんを庇って敵に捕らえられた可能性が高い。そのせいで意識を乗っ取られてるなんて思ってたら、まず退かないだろうな。」
「あかんやん!ウチが説得するわ。生き返る可能性を捨てるやなんてアホか。家族もおるのに。」

凄く真っ当な主張だ。それが生き霊に通用するかどうかは別として。

「紗季の言う事は真っ当だと思うが…」

頼子は頼良の顔を見た。

「まぁ、紗季ちゃんがそう言うなら任せてみよう。実際みつきを説得出来るのは紗季ちゃんだけだしね~。」
「そうや。ウチに任してんか~。悪いようにはせぇへんし。」

奈都が顔を上げると

「紗季ちゃん。母の事お願い。私にも何か出来る事があれば何でもするわ。」

そう言って頭を下げた。

「いややわ~奈っちゃん!頭上げてぇな~。ウチは専門分野やからホンマに任しといて~。」

明るく笑いながら奈都の頭を上げさせる。

「そんでな~?ウチが秋穂さんの中から悪霊っちゅうか疑心暗鬼を追い出したらそこからが頼子と奈っちゃんの出番やな~。逃げる前に退治してほしいんや。」