不器用な優しさに感動を覚える。

「鈍ちんなのは頼良さんソックリやけど。」

ただ紗季は余計な一言をつけてしまうのだ。

「親父と似ているとは心外だな。剣術の才能以外は受け継ぎたくないんだが。」

頼子が眉間に皺を寄せる。

「あら。才能は受け継いでるじゃない。父娘で性格が似るのも当然だし。頼子の良い所は分かる人には分かるわ。それで良いじゃない。」
「私は構わないが、あの普段の親父のユルい所だけは似たくない。」

確かに頼良は普段、掴み所のない感じではある。

「緩急は大事やで?例えばウチは弓をやっとるけど、弦を張りっぱなしにしとったらいざというとき切れてしまう。人も同じやないかなぁ~。」
「紗季ちゃんも深い事言うじゃない。巫女さんとしての能力もあるし。凄いわよ。」
「そうか~?なんや照れるわ~。母さんが桁外れやから、ウチはまだまだやと思ってるんよ~。」

頼子も紗季も秀でた親を越えようとする気持ちがあるのだろう。

「それでな。明日の事やけど、奈っちゃんのお母さんを目覚めさすんは難しくないんよ。ただな、その時にみつきさんがどうなるかわからへんのよ。」
「どういう意味だ?」
「秋穂さんに憑いとるモンを除霊したとするわ。でも、みつきさんは生き霊な訳やから除霊したらあかんやろ?」

説明に納得はしたが、解決法は頼子と奈都には分からない。皆で悩んでいると

「みつきが秋穂さんから離れてたら良いんじゃないの?」

いつの間にか戻っていた頼良が言った。

「!そうや、流石やな~。簡単な事やんなぁ?」
「…そうなると、母さんは何処にいれば良いんだ?」
「霊魂っていうのは、あまり本体と離れてると消耗が大きいんよ。出来れば本体の側におってほしいんやけどなぁ…。」