後ろに膝まずいていた女が見えるように、蕀が体をずらした。

「奴らの顔、しかと覚えておくが良い。我等の宿敵だぞ?」
「御意。お相手は私が務めても?」
「援護をつけてやろう。鎌鼬(カマイタチ)!」

空気が渦を巻く。その中心にイタチのような生き物がうっすら見えた。

だが頼子と奈都は蜻蛉と呼ばれた女の顔を凝視していた。

「油断を見せるとは、随分余裕だな。」

細身の二刀で斬りかかってきたが、頼子と奈都はそれぞれ受け流すのが精一杯だった。

「な…んで母さんが…!?」
「みつきさん!?どうして!」

鎌鼬を相手していた加代と紗季が、二人の言葉にギョッとした。

「ライコ様のお母様?」
「あちゃぁ~っ!なんてこっちゃ。」

気を取られた隙に、鎌鼬は道路の方に飛び出した。

「蜻蛉、こちらは終わった。かえるわよ。」
「はい。こちらは宜しいので?」
「興が醒めた。妾の相手には力不足よ。鎌鼬で十分だわ。」

そう言い残し、かき消すように消えた。

「くそっ!待てっ!」
「頼子さん!鎌鼬が市内に出る前に食い止めな…」
「頼子!行きましょう。」

目的を達成した敵が戻ってくる事は無いだろう。頼子は後ろ髪を引かれる思いで走り出した。

「あかん!人がおるで!」

鎌鼬の向かう先に制服を着た少女がいる。
見えている筈なのに逃げるどころが、待ち構えているようだ。
頼子は跳躍して少女を庇うように前に立った。

「足がすくんだのか?早く逃げろ。」
「助太刀する。」
「は?何を言っている。逃げろ。」

いつの間にか彼女は薙刀を構えている。だが頼子は後ろに押しやった。

「そんな物で勝てるものか!いくぞ!天に代わって!鬼門抜天切(キモンバッテンギリ)!」

頼子が最初の一撃を