彼を間近で見ることは初めてで
観察していると…
「見てんじゃねー。殺すぞ。」
殺す、なんて。
こんな言葉が自然に飛び交う世間は
本当に物騒だと思う。
「殺すなんて、軽々しく言うもんじゃないですよ!」
ついカッとなって言ってしまった。
失言だ…
よりによってこの不良に向かって。
あたしは殴られるんだと思って
腹をくくった。
…フッ。
小さな笑い声。
え?と思って
閉じていた瞼を開けた。
そこにいたのはいつもと変わらない
冷たくきれいな新城海斗。
笑ったように聞こえたのは気のせいだったかな。
とりあえずこの男は危険だから、
もうこれ以上関わらないようにと
前に顔を向けた。