気づくと俺は、寝てしまっていた。



 * * *



背後から聞こえてくる静かな寝息を、あたしは複雑な気分で聞いていた。


(てっきり何かされると思った——)


まだ心臓がバクバク激しく打っている。

なかなか体の震えがおさまらない。

ほっとする反面、どこか心が痛かった。


“2年前のお返しかな”


にっこり微笑んであのときそう言った潤也さん。


(じゃあ、どうして何もしないの——?)


無視することが、あたしへの仕返しなのかもしれない。


(仕返し、だなんて。

潤也さんには似合わないよ)