「ま 待って!」



きっとキスをされる。

そう思った私は、ギュッと目をつむって顔を下に向けた。



「…雛子さん…?」



そんな私に盆子原さんも、不安そうに肩を掴む手に力を緩めた。



「あの、ごめんなさいっ
今日は…」



胸が苦しくて、とてもそんな気分になれないの。

盆子原さんは全然悪くないんだけど、でも今だけは………っ




「…わかりました。
それじゃあ、お休みなさい。雛子さん」



「………っ」



私から手を離した盆子原さんは、それだけ言うと顔を見ないまま家の方へと背を向けて歩いて行った。



キスを拒んで、怒らせちゃったかな…。


でも、本当に…


ごめんなさい、盆子原さん。