いつも別れる本屋さんの前の交差点に来た。
慎吾くんが事故を起こしたのは、この辺りだと後から聞いた。
昼夜問わず車通りの多い所だもの。
でも命に別状がなかっただけ、本当に奇跡的だったよね。
「…雛子さん、指輪は…」
私の何も付けていない手に視線を落とした盆子原さんが、不安そうに訊いてきた。
「あ…すみませんっ
うちの職場、仕事柄指輪は禁止されているんです。
それで…」
「あぁ、なるほど!
そうですよね!」
「あの、ちゃんと大切にさせてもらってますから」
…というか、いただいた指輪はそのまま小箱から出してもいない。
仕事時間でないオフの間なら指輪だってしても大丈夫なんだけど、でもなぜかはめる気になれなかったの。
ちゃんと気持ちを整理してから。
盆子原さんの気持ちをまっすぐに受け入れられるようになってから。
それから、指輪をしようと思うの。
「では、盆子原さん。
おやすみなさい」
私は盆子原さんにペコリと頭を下げると、家の方向へと足を向けた。
「雛子さんっ」
「ぁっ」
と、突然盆子原さんに肩を掴まれて、私の身体は盆子原さんの方へと向けられた。
慎吾くんが事故を起こしたのは、この辺りだと後から聞いた。
昼夜問わず車通りの多い所だもの。
でも命に別状がなかっただけ、本当に奇跡的だったよね。
「…雛子さん、指輪は…」
私の何も付けていない手に視線を落とした盆子原さんが、不安そうに訊いてきた。
「あ…すみませんっ
うちの職場、仕事柄指輪は禁止されているんです。
それで…」
「あぁ、なるほど!
そうですよね!」
「あの、ちゃんと大切にさせてもらってますから」
…というか、いただいた指輪はそのまま小箱から出してもいない。
仕事時間でないオフの間なら指輪だってしても大丈夫なんだけど、でもなぜかはめる気になれなかったの。
ちゃんと気持ちを整理してから。
盆子原さんの気持ちをまっすぐに受け入れられるようになってから。
それから、指輪をしようと思うの。
「では、盆子原さん。
おやすみなさい」
私は盆子原さんにペコリと頭を下げると、家の方向へと足を向けた。
「雛子さんっ」
「ぁっ」
と、突然盆子原さんに肩を掴まれて、私の身体は盆子原さんの方へと向けられた。