「…ふぅん、せのおさんね。
頼りないけどどこか憎めないオヤジなんだ。
どーぞ、ヨロシクしてやってね」



「…ぁ………」



あっけないその返答に、何だか肩透かしにあったような気分だった。


確かに今はそんな風に言ってくれた方が、盆子原さんの手前助かる。


だけど、まるで上手いトボケ方に感心するって言うよりも…





「失礼します、盆子原さん。
あの、慎吾さんに助けてもらった子の保護者の方が、ご挨拶にいらしたのですが…」



そんな時、看護師さんが病室のドアを開けて盆子原さんに声をかけてきた。


慎吾くんに助けてもらった…あ、そうか。
道路に飛び出した幼児を庇ってって言ってたっけ。



「あぁ、はい。
…雛子さん、ちょっと失礼しますね」



「あ、はい」



踵を返した盆子原さんは病室のドアを開けると、きっと廊下で待っているだろう幼児の親御さんのもとへと出て行った。


慎吾くんは一応事故の直後だし、集中治療室にいるわけだから、その親御さんたちもここまで入っては来ないだろう。





「……」



なので、私はこの病室に慎吾くんと2人きりになってしまった。