「あの…」



そんな仕事に追われて大変なイチゴバラさん。

子どもさんに対しても、ちゃんと心配してるステキなお父さんなんだけど。



「イチゴバラさんには、その…」



とりあえず子どもさんがいるって事は、独身じゃあないって思ってた。

だけど毎日毎日うちの惣菜ばっかり買って、台所に立つ人はいないのかなって心配していたの。


今の話じゃ、台所に立てない親御さんと同居してる感じではないみたいだけど。

なら……



「…奥さまは、いらっしゃらないんですか…?」



こんな事、なかなか普通は面と向かって訊けないよね。


だけど、こんな時に忙しくて大変な旦那さんを支えてあげるのが、妻の役目だと思うの。



イチゴバラさんがとっても大変な身で、家庭にもいろいろ心痛しているのは私も胸が痛いもの。


余計なお世話なのは百も承知。


だけど、そこまで聞いたんだから最後まで心配したいのよ。




「…僕の家内は…子どもがまだ中学にあがる前に……」



そっと視線を下に下ろした時、イチゴバラさんの左手を見ながら薬指にあるべきものがない事に気付いてキュッと目を閉じた。



「道路に飛び出した子どもを庇って、そのまま…亡くなってしまったんです」



「…そ……」



やっぱり訊いちゃいけなかったって言うよりも…


「そう…だったんですか…」



むしろツラい事を言わせちゃったなって

そう少しだけ後悔しながら、私は唇を噛みしめていたの…。