「そう言う僕は、イチゴバラといいます。面白い名前でしょう?
では妹尾さん、今日は特に綺麗だから、本当に気を付けて帰って下さいね。
じゃ、また――」
「…………………っ」
そう言ってお客さんは小さくお辞儀をすると、薄くなった照明の中を帰って行った。
イチゴ バラ…さん?
それって、苗字だよね。
でも、イチゴとバラ?
珍しい苗字に驚く事よりも、私はむしろその後の言葉にドキンとした。
――『今日は特に綺麗だから』
たとえ常連さんであっても、お客さんたちは誰も突っ込んでくれなかった私の化粧を褒めてくれた。
しかも、キレイにって…。
「若い」とか「かわいい」とかは言われる事が多かった。
だけど「綺麗」だなんて言われたのは、もしかしたら初めてかもしれない。
「イチゴバラ…さん…」
そのワードから、あの真っ赤な果物と花を頭の中で連想しつつも、あの優しそうな顔をまた思い出してしまった。
(…キレイ…かぁ。
そんな風に見てもらえるなら、明日からもまた化粧はしようかなぁ)
まるで私をオトナな女扱いしてくれたその言葉に、私はしばらく胸の奥が熱くなっていたの。
では妹尾さん、今日は特に綺麗だから、本当に気を付けて帰って下さいね。
じゃ、また――」
「…………………っ」
そう言ってお客さんは小さくお辞儀をすると、薄くなった照明の中を帰って行った。
イチゴ バラ…さん?
それって、苗字だよね。
でも、イチゴとバラ?
珍しい苗字に驚く事よりも、私はむしろその後の言葉にドキンとした。
――『今日は特に綺麗だから』
たとえ常連さんであっても、お客さんたちは誰も突っ込んでくれなかった私の化粧を褒めてくれた。
しかも、キレイにって…。
「若い」とか「かわいい」とかは言われる事が多かった。
だけど「綺麗」だなんて言われたのは、もしかしたら初めてかもしれない。
「イチゴバラ…さん…」
そのワードから、あの真っ赤な果物と花を頭の中で連想しつつも、あの優しそうな顔をまた思い出してしまった。
(…キレイ…かぁ。
そんな風に見てもらえるなら、明日からもまた化粧はしようかなぁ)
まるで私をオトナな女扱いしてくれたその言葉に、私はしばらく胸の奥が熱くなっていたの。