「ね、それがどうかしたの?」



「…あ、うぅん。
何でもないのっ」



…おかしいなぁ。

初めに1つだけを作って冷蔵庫に隠してたのに。

そもそも陳列の方に紛れちゃったのが、私の中でも不思議な話なのだ。




「…まいっか。
さて、サラダはできたから、次はそろそろから揚げを揚げとこうかなぁ」



マヨネーズや塩コショウを混ぜたリンゴサラダをお皿に盛りつけると、私はラップをかけて冷蔵庫に入れて冷やした。

代わりに味をつけていた鶏肉の入ったボウルを取り出すと、今度は油鍋の火を点けようとガスコンロの前に行こうとした。



「ひな、まだすぐ食べるわけじゃないから、それは後でもいいよ。
それよりさ…」



「ん?」



グイッと腕を掴まれたかと思ったら、私は身体を引き寄せられた。



「…ね、もっかいプレゼント、ちょーだい」



「――――――!
で でもこんな時間に、また…?」



「大丈夫だって。
どーせ誰も来たりしないし、親も夜まで帰ったりしないんだからさ」



「…………あ うん…」




私だって、まさか今日が慎吾くんの誕生日だったなんて、思わなかったもんなぁ。


何も用意できなかったわけだし、私なんかでいいんならいっぱいあげちゃっても、もちろんいいよ。




だけど…


年に1回の誕生日でさえも、慎吾くんは今日も1人でご飯を食べるの?



ご家族の人…慎吾くんのお父さんは、自分の息子の誕生日とか、何もしてあげないのかなぁ…。