「はい、雛。
これささやかだけど、お母さんからのプレゼントよ」



「えっ」



朝からちょっとブルーになりかけた私だったけど、そんな私にお母さんは小さな紙箱のようなものをくれた。



「なぁに、これ?」



「開けてごらん」



まるで判子でも入ってるのかなと思うような、長方形の小さな箱。


プレゼントって言うくらいだから、判子なわけないと思うんだけど?


なんて思いながらその小さな箱を開けて、中のものを取り出した。



「…あっ、これ口紅?」



「そう。
あんた、どうせロクに化粧なんてしてないでしょ」



――ギクッ


言われた通り、普段私はこれといった化粧はしていない。


なんとなーくお風呂あがりに化粧水をつけるくらいで、仕事前にファンデーションとかはしていないのだ。


だからリップクリームはともかく、ましてや口紅なんて10年前に買ったものが未だにポーチに入ってたりするんだから笑えない。




「ダメよ、若いうちから顔の手入れはしとかないと。
年取ってからじゃ遅いんだから」



「……………」



そう言うお母さんは目は悪くとも、簡単でも化粧は一応しているから感心する。



カパッとキャップを開けて出してみた口紅は、薄くてキレイなピンク色をしていた。



「…ありがと、お母さん。
大事に使わせてもらうね」



口紅かぁ。

いくらこんな顔でも、やっぱり化粧とかした方がいいのかなぁ。