私は鼻を近付けてきた慎吾くんから、グイッと身をそらして離れた。


女のクセに“クサい”なんて、かなり致命的だよぉ!




「あははっ、そんなんじゃないよ。
汗クサいなんて言ってないし」



「えっ、だって!
じゃあ、カレー…臭?」



いくら何でも、加齢臭なわけないもんね!

さっきまでお料理してたんだから、きっとそのニオイだ。




「だから違うって。
ひなの、いいニオイ。
ね、もって嗅がせて」



「ひゃぁ」



ギュッと私の頭が抱き寄せられて、そこに慎吾くんの鼻があたっている。



えっと、じゃあ結局シャンプーの香りって事なのかなぁ。


そんな高級な奴なんて使ってない、普通の安物シャンプーなのにな。




て言うか、この体勢…っ!





「ねぇ、ひなぁ。
ひなのニオイ嗅いでたら、俺お腹すいてきちゃった」



「えっ
じゃあカレーあっため直して来るから…」


「違うよ」




いつまでも頭を抱き寄せられてるのも、変な感じがしてきた。

だから丁度いいタイミングと思ってお鍋に火を入れようと立ち上がりかけた時、そんな私の腕を慎吾くんはギュッと引いた。



「俺、ひなを食べたい」



「…………………へ?」