「ねぇ、いくら?」



「ぁっ、えっと…っ」



勝手に約束を取り付けてさっさと帰っていく慎吾くんに、次に列んでるお客さんが早速自分の持ってきた惣菜をカウンターに置いては財布を開いて訊いてきた。



ちょっ、ちょちょちょちょっと待ってよ!

早く慎吾くんを追いかけないと、約束したまま帰っちゃうのにぃ!!



「ねぇ、いくらだってば!」



「ああっはい!ただいまっ
えぇと…っ」



よりによって、ちょっとの時間も待てない短気なお客さんに捕まっちゃったーっ


しかも、そういう時に限ってあれこれたくさん惣菜持ってきてるしーぃ!




「えーっと…はい、合計2080円ですっ」



「はいはい。
あ、ねぇ小さいの出してもいい?財布軽くしたいのよね」



こんな時に限って、小銭をジャラジャラ出して来るパターンのお客さんだよおぉ!!



「…あ…どうぞ…」



顔はいつもの営業スマイルだけど、心の中はもう泣きそうだった。



あーあーあーっ

こんな事してる間に、ほらぁ…っ





…うん、慎吾くん行っちゃったよ。




「あら、1円足らなかったわ。
じゃあ1万円からね」



「…はい、1万円お預かりしまーす…」






――というわけで、私はまた彼と会う約束をしてしまったわけだ。



しかも今度は…

家に、行くって…!?