「ありがと、雅」


雅が帰って行くと、綾香先生がベッドに腰かけた。


「実はね」


自分の右手薬指についた婚約指輪を触りながらつぶやいた。


「実は…私、婚約者がいるの。
同じ外科医の人なんだけど…今アメリカに行ってる。」


すごく切なそう…。


「乃愛ちゃんは…旦那さんが好きだったんでしょ?」


「………あたしの片思いですよ」


藤波先輩は、あたしなんかどうでもいい。



「好きなら離れないでよ…」


綾香先生は好きなのに離れちゃったんだよね。