「うわぁ、旦那さんのお母さん…!」


「いつも義娘がお世話になってます」


ドキッ。


あたし、こんなこと言われたことほとんどない…


嬉しい、な…


「嘉代さん、」


なんか恥ずかしい。


「で、乃愛ちゃん、今日は何科?」


「えっと「産婦人科で」


!!


嘉代さん!


「あらら?二人目?」


ニヤニヤしてる綾香先生はあたしを産婦人科に連れて行ってくれた。


もしいたら、名前に絶対“恭”っていれたいな。







「おめでとう、乃愛ちゃん」



産婦人科医の木下先生と綾香先生のその言葉を聞いた時、あたしは涙を流した。


恭の子が、もう一人…


あたしに家族がもう一人…!


「嘉代さんっ」


診察室を出て嘉代さんに抱きつく。


「恭に連絡しなくちゃね?」


…………………連絡……


「………………」


「恭の子なんでしょう?」


「そう、だけど…」


頑張り始めてる恭の、邪魔にならないかな…?


「連絡は「乃愛ちゃんに任せるね」






あたしに任せてくれた…?


「連絡…しなくていいですかね…?」


「帰ってきたらびっくりするだろうけど大丈夫よ、きっと」


大丈夫、だよね。


一人で育てるのは不安、って思ったけど嘉代さんも俊哉さんもいてくれる。



きっとあたしは頑張れる。


頑張ろうね、赤ちゃん…。


あたしはお腹をそっと撫でた。












「ママ、行ってきまーすっ」


「いってらっしゃい」


愛里が、幼稚園に通い出し今は年中さん。


そして。


「いいお天気だね…新」


あたしの第二子、藤波新。

しん、じゃなくて あらた ね?


今 新は偶然にも恭が行っちゃったときの愛里と同い年。


よく歩くわ、よくしゃべるわ…


「新、お散歩行こうか」


「うん」


新と手をつないで道を歩くといろんなものが見えるの。


新は動物が好きだったりね。





近所のわんちゃんたちの名前覚えてるんだよ。


将来絶対頭いい子になる。


とか想ってるあたしは親バカかなぁ?


「ママ、早く」


「うん」


新に手をひっぱられ止まっていた足を動かした。



恭、いかがお過ごしでしょうか?


あたしは、元気です…。


ここに、あなたの子供がいるよ。


男の子。


新、ってゆう笑顔がかわいい子なんだよ。


恭には鼻と口が似てるかも。


恭の実家で見たアルバムの恭の笑顔とそっくりの笑顔で笑うの。





お願い……




「会いたいよぉ……」



早く、帰ってきて……




愛里は幼稚園でもモテモテらしいから早く帰ってこないとお嫁にいっちゃうかもしれないよ?


「はぁ…」


「ママ?」


あたしを不思議そうに見上げる新。


「ごめんね、行こっか」


新の手を握りなおして歩きだした。





夕方、愛里と新とスーパーに行った。


そしたら突然…普段おとなしい愛里が大声をあげた。





「パパだ!」


雑誌の表紙を指差して言ったの。


興奮する愛里に比べて 新は首を傾げる。


「パパ…?」


「ママっ、これ買う!?」


「うん、買おっか」


雑誌をカゴにいれる。


前にもこんなことがあった。


あたしが興奮してたな…

あの頃は毎日恭が家に帰ってきてくれてて…


幸せだった…


今は愛里も新もいるから幸せ。

だけど愛里も新も成人して家を出たら?


あたしは1人になっちゃうの…?


「………恭……」






「ママ、パパいつ帰ってくるの?」


…いつだろう?

あたしが聞きたいよ…。


「きっともうすぐだよ」


「わかった!」


もうすぐ、もうすぐってあたしは自分に言い聞かせてるの。



だって最近arkの名前を聞かない日はないくらい大きくなってる。


いつ帰ってくるんだろう。


「……ママ?」


新があたしを見上げる。


「あ、ごめんね」


「ママ、ケーキケーキ!」


「え?」


「今日は愛里の誕生日だよ!」


あ……





プレゼントは買ってある。


ケーキ買わなくちゃね。


娘の誕生日忘れてるなんて母親失格だ…


「ケーキ買っていこう」


「うん」


「いちご?」


「新は何がいーいー?」


「いちご!」


愛里と手をつなぐ新。


仲良しな姉弟で安心する。


「愛里、決まった?」


「うーん…」


「いちご!いちご!」


「愛里のケーキだから新は決めちゃダメ」


「はーい…」


結局愛里が決めたのは小さめのいちごのケーキだった。