ガラガラガラ、と恭のキャリーケースの音が耳に響く。


「パパ?どこか行くの?」


「仕事にね」


「頑張ってね」


「愛里、俺のこと忘れちゃダメだからな?」


あたしの前を歩く恭の右手にキャリーケース、左手に愛里の右手。


なんだか恭がすごく遠くに感じる。



「っ……ぅ…」


どうしよう、涙が出てきた。


こんなことなら、見送り来なければよかったな…。


「……乃愛」


恭が振り返る。


「きょ、ぉっ…」