うらやましいなぁ…。
「乃愛ちゃん?愛里、連れてっていいかな?」
「はい、よろしくお願いします!」
「乃愛ちゃんも、恭をよろしくね」
「はい」
愛里は恭のお父さんとお母さんと手をつないで 小さなポシェットを下げて出て行った。
「ほら恭、寝なきゃ」
「…乃愛も一緒に」
「片付けしてからね」
「じゃあ 俺もまだ寝ない」
いやいや、まだ寝ない、じゃなくて。
「病人なんだから寝てなきゃ」
「乃愛も一緒」
案外頑固だなぁー…。
「はいはい、寝ますよ」
「ん、寝よう」
ほぼ強制的にベッドに引きずり込まれた。
「まだ熱あるね」
「ん」
「薬、飲まなくちゃ」
「…ん」
「薬飲むならなんか食べなきゃ」
「……んん」
「ね?食べれそう?」
「……寝る」
あたしを抱きしめなおしてギュッと目を閉じた。
…………もしかして、薬苦手?
なんか小さい子みたいでかわいい。
「……早くよくなってね」
「ん」
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「乃愛さーーんっ!」
「う゛ーーー………具合悪い」
翌日。
見事に立場が逆転したあたしたち。
「なにうつってんだよ」
「だってーー…」
「愛里は母さんが預かっててくれてるから、病院行くぞ」
「やだーーーー…!」
「いいから行くの!」
……………あたしはまた強制的な恭に病院に連れて行かれた。
恭の風邪を見事にもらったあたし。
こうやって夫婦愛が深まってくのかな。
なんて。
あたし熱あるみたいっ。
数日経ったある日。
「…………終わった?」
「まだだめ」
「いつ終わんの?」
あたしはベッドの上で恭を拒んでいた。
だって生理中だもん。
「中に出さないから」
「だめ」
「挿れないから」
「だめ」
「指だけっ」
「だめ!」
ダメなものはダメ!
「ほら、寝よ?」
「………何日我慢すんだよ…」
恭が出張から帰ってきたら生理が始まった。
運がなかったね。
「おやすみ」
「……寝れねー」
なんか言ってる恭をシカトして布団を被った。
「………恭?」
あれ、反論なし?
「…なに」
うわ、拗ねてる?
「生理終わってから…」
恭のほうを見たけど。
恭は寝っ転がったままあたしに背を向けていた。
「………あたしとえっちできないの、そんなショック?」
「別に…体目当てなわけじゃねーし」
「………じゃあなんで拗ねてんの?」
「拗ねてねーよ」
「………なんでこっち見ないの?」
「乃愛見ると寝れないから」
「…………やっぱり体なんじゃん」
「体だけが目的じゃない」
「…………じゃあ「もう寝んだろ?さっさと寝たら?」
グサッ。
なんか心に突き刺さる。
「………ヤれない奥さんは不要、って感じかな」
「は?」
「………あたしより体の相性いい人探したら?」
「え、乃愛?」
あたしはパジャマのまま部屋を出た。
……………生理でイライラしてるのかな…
こんなのあたしじゃない…
恭、ごめんね…
あたしはリビングのソファーで寂しく夜を過ごした。
「……………乃愛」
「……あ……おはよ…」
恭が起きてきた…
って、あれ…?
「恭、くまでき、てる…よ…?」
「……あんなこと言われて…呑気に寝てらんねぇだろ………」
あたしのせいだ……
「……ごめんね…?」
「…生理中は仕方ねーんだろ?」
「………うん…ごめんなさい…」
「全然いーから」
「……………」
「不細工な顔」
!!ひどいっ!
「奥さんに不細工って!」
「俺の奥さん不細工だし」
「愛妻家のくせに!」
「………俺、趣味悪いかな」
「なにーー!?」
あたしが恭をポカポカ叩くと 恭は目を細めて笑った。
「なんか俺、今幸せかもしんない」
え?……………
「幸せ?」
「うん」
「そうなんだ…」
「たまにはのんびりしゃべんのもいいなって」
「でしょ?あたしものんびりするの好きだよ」
「早く終われよ」
「それはわかんないね」
「二人目も欲しい頃だし」
「えっ…!?」
ふ、二人目!?
「やっぱ男の子もほしいな?あ、でも女の子はかわいいよな」
1人でなんか言ってる。
「恭…?」
「ん」
「……二人目、頑張ろっか」
「…………頑張んのは俺より乃愛」
…まぁ、そうなんだけど。
「でも「頑張れ乃愛、いつでも協力してやる」
……………
「ん?」
「なんでもない」
二人目かぁ…。