「あっちで待ってんね」
って言葉を残して。
待っててくれるんだって。
なんだか楽しみ。
あたしはあったまってお風呂を出た。
「恭ーー…お待たせー…」
「おせーよ」
あらららら?
待ってんね、っていったのは誰だっけ…?
「女の子にとってお風呂は大事なものなんだよ!」
そう言いながら恭に近づく。
「待たせたぶん、楽しませてくれんだろ?」
楽しませて…?
「ここ、座って」
ここ、って言って膝を叩く旦那様。
まさか…!
「どこ?」
「俺の膝」
はい?
「え、どこ?」
「俺の、膝の、上」
い、や、だぁーーー!!
「だからね」
「乃愛さん」
…………………あたしこのちょっと低い声の 乃愛さん に弱いんだよ…。
「………おいで」
とか言いながらなぜか脱ぐ恭。
「なんで脱ぐ?」
「どーせすぐ脱ぐだろ?」
「……………」
その後すぐ恭に寝室まで連行されたのは言うまでもない。
ある朝のことだった。
「乃愛ぁぁぁぁ……」
起きたら隣に、ぐったりした恭がいた。
「恭?どうしたの?」
裸のままうつぶせでぐったりしてる恭の目はどこか虚ろで。
具合が悪いと主張しているかのようだった。
「具合、悪いの?」
「んーーーー…」
恭のおでこを触るとすごい熱!
「ちょっと!熱あるよ熱!」
「えー熱ー?」
「会社に電話しなよ!」
「………ケータイ…」
「はいっ」
「ん…」
恭は、具合が悪いはずなのになぜか電話のために部屋を出ていった。
………………なんで?
胸になにかがひっかかった。
まさか?
なんで?
頭がもやもやした。
「もうわけわかんない」
具合悪いならここで電話すればいいのに。
恭の風邪うつっちゃまずいし、愛里はまた誰かに預けとこう。
雅は今日仕事かな?
~♪
ないすタイミング。
誰だ?
《着信 恭のお母さん》
!!!
「もしもし?」
『あ、乃愛ちゃん?今日ね、うちの人が愛里連れて遊園地行こうって言うんだけどいいかしら?』
!!
「もちろんです!愛里喜びます」
『乃愛ちゃんも行こうね?』
あたしも?
「恭が熱出しちゃったのであたしは今日恭の看病してます」
『あら 大変』
「愛里にうつっちゃ困るので 愛里お願いします」
『そうね、じゃあ…9時くらいに愛里を誘拐しに行こうかしらっ、ふふふっ』
誘拐……。
「わかりました、お願いします」
ガチャッ。
「………誰と電話?」
「恭のお母さん。9時くらいに愛里を誘拐しに来るって」
「誘拐って」
ドサッ
と あたしに恭が乗っかった。
………………裸のまま。
「……………乃愛…」
にしても 恭の体、熱い。
「乃愛…」
ぎゅーっとつぶれそうなくらい抱きしめられる。
「どしたの?」
「…こーしてたい」
「ん…いいけど…寝なきゃダメだよ?」
「…だよな」
落ちてた服を拾い上げ恭に着せる。
「タオル、濡らしてくるね」
「ついでになんか飲み物」
「わかった」
今はまだ7時。
愛里を起こすのはまだまだだね。
えっと、飲み物と濡れタオル。
ついでに盥に水も入れていこ。
お風呂の盥に水とちょっと氷を入れてタオルと、
タンブラーにお茶入れて寝室に向かった。
「恭っ、大丈夫?」
「…なんとか」
「あ゛、体温計忘れた」
とってこなきゃ!
「………乃愛、ここにいて」
「……………でも、体温計…」
「乃愛がいてくれればすぐ治るから」
……………仕方、ないなぁ…。
「…うつったらどうするの」
「俺が看病してやるから」
ならうつってもいいかな!
「よし。はい、寝て!」
上半身を起こしてた恭をベッドに倒して取り押さえる。
「濡れタオルで拭くからねー」
「…全身、だろ?」
「背中と脚と顔と腕」
「冷たいなぁ」
「病人は黙っててください」
「…………はい」
恭の体をタオルで拭いてるとやたら静かになった。
「恭?」
「…………んーーーー……」
あ。寝てる。
よかったーっ!
あたしは寝てる恭の体をせっせと拭いた。
…………なんかセクハラしてる気分だった。
「あ!」
もうすぐ9時!!
愛里起こさなくちゃ!!
「愛里ーー!」
「…ママぁ?」
「今日は遊園地行こうって!」
「………だぁれ?」
恭のお母さん…は…
「嘉代ちゃん」
恭のお母さん…嘉代子さんは おばあちゃん って呼ばれたくないらしく。