あたしだけ置いてけぼりー!


「乃愛?お前もこっち」


リビングに戻ろうとしたあたしの肩をグイッと引き寄せた。


「きゃっ」


「きゃっ、じゃねーよ、誘われんの待ってただろ?」


「う、うん…////」


「素直でよろしい」


恭が少し大きめに作った湯船は3人で入っても余裕な広さ。


……まぁ、愛里はまだ小さいけど。


「わーーーー!」


「っぶ…!」


「ママーーーー!」


恭に頭を洗われてるあたしは愛里に水をかけられ…。






「愛里になめられてる」


「うるさいっ!」


「ママぁ」


「なに?」


「愛里、ママ好き!」


ずっきゅーん!!


愛里かわいーよーーーー!!!


「ママも愛里好き!」


「きゃーー!」


この きゃーー! はあたしの口癖がうつったみたい。


よく絶叫してるからさ、あたし。




お風呂から上がると愛里は疲れたらしく、恭の腕の中でぐっすり寝ていた。


「ご飯すぐ出すからね」


「ん」


恭は愛里の頭を撫でながらすごく幸せそう。






「乃愛」


「んー…?」


「愛里は…手がかかんなくていい子だな」


「そうだね」


「乃愛………」


「ん?」


「……………なんでも、ない」









愛里が産まれて…

愛里の成長を恭と2人でずーっと、見てられると思ってた。



だからね、全然気づかなかったよ。


恭が…悩んでたこと。







「みあちゃーんっ」


「うっそ、愛里!?大きくなったねー!」


愛里は、雅も大好きなんです。




愛里は人なつっこいし、雅は子供ほしがってるし。

仲良しなんだよね。


「あ?雅さん来てんの?」


なぜか雅を雅さんと呼ぶ恭。


「うん、愛里に会いたいんだって」


「愛里も懐いちゃってるしなぁ…」


「だね」


「俺 髪切りに行ってくる」


「行ってらっしゃいっ、写真送ってね?」


「すぐ帰ってくるから」






あたしの頭をわしゃわしゃしてから軽くキスして恭を見送った。



「乃愛ちゃん幸せだねぇー」


「幸せだねぇー」


…………………


「雅っ、愛里に変なこと教えないでよね!?」


「教えてないよーんっ」


雅と遊ぶ愛里は本当に楽しそうで。


「きゃーーっ」


「待て愛里ぃぃぃ~~!!」


「きゃーーっ、みあちゃーんっ」


あたしは今日くらい愛里を雅に任せてもいいかな、なんて思ってソファーにもたれかかった。

あぁー…なんだか睡魔が…。






久々に夢に両親が現れた。



両親がね…

涙を流してあたしに謝ってるの。

明らかに夢ってわかる夢。


どうしたのかな?

なにかあったのかな?



「パパぁ?」


なんて言う、愛里の声で目が覚めた。


「ママぁ、お電話ぁ」


「え」


電話…

パパって言ってたってことは恭から?


「もしもし?」


『あ、乃愛?』


「うん、髪切ったの?」


『…んなことよりさ…ちょっと…来てくんね?』


「?……うん」






愛里を雅に任せてあたしは恭と約束した喫茶店に向かっていた。


「乃愛…!」


「恭」


どうしたのかな?


「どうしたの?」


「乃愛の両親、が…」


両親…?


夢見た直後に…夢ってすごいな。


「………………」


「ごめんな」


なんで恭が謝るの?


「大丈夫だよ」


席にあたしの両親が座っていた。


「……………なんですか」


「………乃愛…娘が、産まれたらしいな」


「産まれましたが」


「会わせて…ほしい」






「いやだ」


絶対に、愛里には会わせたくない。


「なぜだ…?わたしたちの孫だろう?」


「あなたたちに…会わせたくない」


「っ…乃愛ッ…!」


今まで黙っていたお母さんが手を振り上げた。


「あなたって子は…!」


殴られる…。


あたしはギュッと目をつぶった。


「…………………娘に、そういう態度でしか接すれないんですか」


恭…


「俺は、あなたが乃愛に謝りたいって言うからわざわざ乃愛を呼んだんです」






え…?謝りたい?


そっと目を開けるとお母さんの振り上げた手は恭にがっちり掴まれていた。


あのお母さんが謝るわけないよ…。


「恭…そんなことなら帰ろう…?」


「…でもっ…」


謝ってほしいなんて、思ったことないもん。


「ね、帰ろ?」


「……………そう、するか」


あたしは恭の手を握りしめ、喫茶店をあとにした。







「……なんだったの?あの人」


「捕まってさ…乃愛に謝りたいから会わせろって」