「エイだ…ふふっ」


嬉しそうだ。


よかった。


「ありがと」


「ん」


「あたしも買ったの」


え?


ポケットから出てきた小さな袋。


「見て?」


乃愛をソファーに置いて隣に座り、袋を受けとった。


中から指輪が出てきて俺の手のひらの上を転がった。


「…イルカだ」


「かわいいでしょ?」


「乃愛、付けて」


手を差し出す。


「これは、右手」


右手の人差し指に乃愛からの指輪がはまった。






「右手なの?」


「右手の人差し指には指導者として力を発揮できる、とか困難を乗り越えるって意味があるの」


へーーー…


「だから、恭にぴったりだなって思ったの」


やっべー…


「ん?どうしたの?」


ギュッと力いっぱい乃愛を抱きしめる。


「やっぱ乃愛さいっこー…」


「ちょっとっ…苦しいよっ…」


もう離したくない。


いや、もう離せない。


「乃愛、俺から離れんなよ?」

「恭が浮気したらあたしも浮気しちゃうからね」






あたしの誕生日から早3ヶ月。


「乃愛、おはよ」


「あっ、恭おはよぉ」


「朝食?」


「うん、今作ってるよ」


「俺今日出かけてくる」


「いってらっしゃい」


土曜日なのに…今日も会社なのかな。


寂しいな。


「できたよ、イングリッシュマフィン」


「うまそ」


イングリッシュマフィンにスクランブルエッグをのっけてケチャップをかけた。


「いただきます」


恭は朝ご飯を食べて急いで準備して家を出て行った。





なんか寂しいな~~~~……


そう思ったとき。


~♪


ケータイが鳴った。


あ、雅だ!


「もしもし~?」


『乃愛ちゃーんっ、雅だよ』


「わかってるよ、どしたの?」


『今日ヒマ?あたし久々のオフなの!だから3ヶ月遅れなんだけど…』


「祝ってくれるの?」


『当たり前っ!今から乃愛んち行くね~♪』


有無言わさず来ちゃうんだね。

雅っぽいや。


しばらくすると、玄関のインターホンが鳴って雅が来た。





「きゃーーーっ!乃愛、久しぶり~~~!!」


「久しぶり」


「幸せそうでなによりだよ~!」


「ぎゃっ」


すごい力で抱きつかれ、あたしは思わず倒れた。


誕プレをもらって、街に出かけた。


「どこ行く?」


「喉乾いた!」


あたしは目の前にあったカフェを指差し…


「じゃーここ入ろっか」


「そうしよう」


中に入って席に座り、あたしはアイスココア、雅はアイスレモンティーを注文。


「あのね…」


ん?






「どしたの?」


「あたし…別れたの」


「え!」


嘘っ…


「なん…で?」


「浮気、された」


浮気…?


「そんな…」


「浮気して…子供できちゃったんだって…」


子供!?


「だから、別れたの」


そんな…浮気して子供なんて…


「やっぱりあたし…男見る目ないみたい!」


「だね」


「乃愛は?最近ラブラブなんでしょ?」


「えっ…////」


ラブラブ…?


まぁ…ラブラブ…/////






「う…うん…」


「よかった!乃愛には幸せでいてほしいよ!」


なんか…


「雅…無理してない?」


「…え…」


ウエイターさんがミルクティーとココア持ってきた。


「……………」


「……………」


雅がなんか言うまで待とうって思うから何も言わない。


「………なんで…わかっちゃうかなぁ……」


「わかるよ…親友、だもん」


「だよねぇー…ほんとはね…」


涙目な雅。

あたしは急いでハンカチを差し出した。






「…ほんとは…悔しいよ…むかつく…」


雅はハンカチで目をそっと拭きながら泣き続けた。







「なんかごめんね?乃愛の誕生日を祝うつもりだったのに」


「大丈夫だよ?雅、幸せでいてほしいよ」


「…ついこないだまで逆だったのにね」


「そうだね」


ウォータープルーフだったのかあんなに泣いたのにキレイなアイラインを残した赤い目。


「絶対、絶対に…無理しちゃやだよ?」


「はいはい」


「泣きたいときは、いつでも連絡ね」





「ありがとう」


「なにかあったら、連絡ね?」


「乃愛もね?」


「うん」


手を握りあって日が暮れた頃、ばいばいした。




「あ」


あたしがよく行くカフェのケーキ、新作出てたな…


よし。買って帰ろう。



駅前のカフェに寄ると外に行列ができてて、あたしも最後尾についた。


お店の外で売ってて少し暑かった。


溶けないのかな?


って、シフォンケーキだったっけ?


溶けないか、シフォンケーキ。


早く帰ろーっと。