『こんにちは』
声が聞きたい!
《ずばり!その人気の秘密は?》
『基本的にデザインは俺が担当してるんですけど、「これだ!」って思ったものをそのまま商品にしてます』
うぅ…?
話がかみあってない…?
《では次。ark の由来は?》
『妻の名前です、ノアってゆうのが。で、ノアの方舟から… Noah's ark。』
な、なな…なんか照れる!!///
《愛妻家なんですね》
『はい、ぞっこんです。図で表すと…
[俺>ノア]
こんな感じですかね。』
………………図で示してる恭先輩の写真が載ってる。
この人は何をやってるんだか…
《好きな食べ物はなんですか?》
『家でゆっくり食べるものです。』
『嫌いなものとかってありますか?》
『ノアの敵は嫌いです(笑)』
…………………
あたしばっかり。
《今一番行きたいところは?》
『風呂場、かな』
《身長は?》
『182です』
《血液型は?》
『AB型』
インタビューしてる人、だんだん質問が適当になってる…。
くだらないやりとりが終わると、恭先輩に1日密着取材ってゆうコーナーが、
パソコンに向かう黒縁メガネの恭先輩やら…
欠伸する恭先輩やら。
あたしは思わず付箋を貼り付けた。
この雑誌は一生の宝ものにする!
と、心に誓った。
だーって、こんな隙ありな恭先輩、めったに見られないよ?
これは永久保存版!
そのままずーっと、ソファーに寝転んで雑誌を見ていた。
*******
「乃愛、ただいまー」
ん?
返事なし。
夜なのに真っ暗な家。
まさか…乃愛になんかあった?
「乃愛ッ!」
急いで中に入り、電気をつけた。
「乃愛?」
……………ソファーに横たわる、女が1人。
すーすーと寝息を立てている。
「……乃愛」
心配しすぎたか。
「…きょー…せんぱ…」
ムフフ、とにやける乃愛。
胸に雑誌を抱いている。
「…………これは……」
今日発売の週刊誌。
俺のインタビューが載っている。
「…だーい…すき……」
こいつ…寝てるよな?
計算してないよな?(真顔)
俺がここにいるってわかっててやってるのか?
「乃愛」
「………すー………」
……………やっぱ寝てるよな?
「……………のーあ」
耳元で少し甘く囁く。
まだ爆睡の乃愛。
「……乃愛、俺帰ってきたよ……」
雑誌なんか見なくたって毎日隣に帰ってきてるだろ?
さて…と。乃愛はどこまでいたずらしたら起きるかな?
*******
「ぎぃやぁぁぁぁぁあ!!」
なになになに!?
「ななな…」
なんで目の前に恭先輩がいんのーーっ!
「いいい…いつ帰ってきたの!?
てゆうか今何時!!」
「8時過ぎちゃったよ」
!!!
「ご飯準備してないっ!
今からすぐ作るからね!」
「あー…俺も手伝うよ」
「愛妻家なんですね」
「…………そうですが、なにか問題でも?」
「あたしも 恭先輩が大好きだよっ」
「…乃愛?」
「ん?」
「誕生日…どうしたい?」
「え?」
「12日…誕生日じゃん」
祝ってくれるの…?
「俺にはわがまま言えって…言ったよな?」
「えっ、とー…」
前からのあたしの夢。
「うん?」
「誕生日に…ど…」
ど…
「続きは?」
「動物園に…行きたいです」
「ぶっ」
…………今笑った?
「動物園て…」
「……………」
キッと恭先輩を睨みつける。
「かわいいな、動物園」
嘘だ!
この人、絶対あたしのことバカにしてる!
「笑うならいいですっ!1人で行ってきます!」
「誕生日に1人で動物園て…
俺12日休みとってあんだけど」
嘘!!
わざわざ!?
「え、ごめんなさいっ!」
「は?なんで謝んだよ」
「だって…」
あたしのせいで…
「謝られるよりお礼のほうが好きなんだけど」
「ありがと、恭先輩」
「ん」
それから2人で夜ご飯の肉じゃがを作った。
「12日…楽しみ」
無意識に出てしまった言葉。
「そ?」
「うん!すっごい楽しみ」
「ライオン?ぞう?なにが楽しみ?」
そんなのもちろん…
「恭先輩と一緒なことが楽しみ!」
ブフォッ…!!
恭先輩は飲んだお茶をテーブルに吹き出した。
「ちょ…汚い…」
急いで布巾で拭き取り。
「…それ無意識?計算?」
難しい顔した恭先輩。
「お茶が汚いってゆうの?」
「俺一緒なら、ってやつ」