一点を集中して見つめる。
チラ…
あ、今目が合った…
「し、」
声をかけようと手を少し上げた。
でも、その手はすぐに下に下がった。
慎は直ぐに目を逸らし、またお客さんに笑いかけていた。
…なんで?
仕事だから?
でも、でもさ?
「っ…幸人、行こ!」
「ちょ、なに!?」
無理やり幸人の腕を引っ張り、目指していた洋服屋に逃げるように入った。
…なんか虚しいな。
私だけ、好きみたい。
こんなの、片思いと一緒じゃん。
苦しい。
「さ、幸人!今日はお姉ちゃんが奢ってあげる!なんでも言って!」
「は!?どういう風の吹き回し?」
失礼…。
「…何にもないよ」
今は慎を忘れたい。
それから服屋、食べ物屋、CDショップなどいろいろなところに付き合わされて、財布の中は空っぽ。
「じゃ、姉ちゃん、サンキュー」
「気をつけて帰ってね。」
8時ごろ、幸人と別れ、
1人で慎のいる家へと向った。