その日の帰り道。いつもより元気のない静かな俺らを、南緒は心配していた。


『ふたりとも、今日はなんだか変じゃない? 元気、ないの?』


俺はその言葉に首を振った。
南緒を心配させたくない。

でも、多分我慢の出来なかった翔太が口を開く。


『南緒は、俺らから離れていかないよな? 他に好きな奴なんて、作らないよな?』


あれほど考えなしに言葉を吐き出した翔太を、おれはあの時以外見たことがない。

それくらいに、俺たちは動揺してたんだ。すごく不安で、怖かった。


南緒は、翔太の言葉には答えずに、道端の草むらへと駆けて行った。俺も翔太も、その行動は意味がわからなくて、ただ南緒を追いかけた。


『南緒っ!なにしてんだよ』

『ねえほら、見て、2人とも』


南緒が、俺たちの大好きな笑顔で、笑った。まるで、夏に輝く太陽みたいな笑顔で。

そして、そんな南緒の手のひらには、みっつの四つ葉のクローバーがあった。


『ここね、四つ葉がたくさん見つかるんだよー。ほら、一個づつあげる。』


俺らに無理やり四つ葉を押し付けて、南緒は満面の笑みで笑ってて。なんで輝いているんだろうって思った。

俺らが南緒を好きになったのなんて、あたり前のことだよ。好きにならないわけがない。だって南緒は、太陽みたいな存在なんだ。


『わたしが2人から離れるわけないじゃん! だってわたし、ふたりのこと大好きだもん! 』


南緒の笑顔に、ぎゅっと、心臓が掴まれた気がした。南緒にはかなわない。俺らの大好きなお姫様。


そして、俺たちは、言ってしまった。


まだ、純粋で、ガキで、
何の考えもなかった俺らは。


南緒に『好きだ』、と。
『どちらか1人を選んでほしい』、と。


俺らはそう、南緒に伝えてしまったんだ……。