たかが小学生。そう思うだろう?
でも俺たちにとってはそんなに簡単な話じゃなかった。


だって、俺ら以外に南緒のことが好きな奴がいる。そんなこと、考えたこともなかった。


南緒が他の男のことを好きになるという可能性だってある。俺らから、離れてしまう日が来るかもしれない、ということを、俺たちはその時初めて気づかされたんだ。


そして、同時に思う。


『嫌だ』


俺以外の男のことを好きになる南緒なんて。俺ら以外の奴といる南緒の姿なんて、絶対に見たくない。


『嫌だ』


それは、独占欲という名の真っ黒い感情だった。俺も、翔太も。目の前が真っ暗になったみたいに、なにも考えられなくて。


南緒が俺らの横からいなくなるなんてこと、想像すらできなかった。だって俺らは、ずっと、ずっと、南緒だけが好きだったんだ。