「ただいま」


珍しく返事が返ってこない。
まだそれほど遅い時間じゃないんだけど。


「勝也くーん…」


彼の部屋を覗くと、またいつかのように机に伏せて寝息を立てていた。


彼の背中が何だか寂しそうで…ほぼ無意識に後ろから抱きついていた。


彼の顔を覗き込むと、目尻が濡れている。


「泣いてたの…?」


「…泣いてないよ」


少し枯れた声でそう返された。


…強がり。


「起きてたんだ」


「…ん、千絵さんに起こされた」


そう言って彼は立ち上がると、すこし情けなく笑ってこちらを見つめてきた。


「…どうかした?」


そんな目で見られたら、さすがに照れてしまうんだけど。


「…ほんとは寂しかった」


真面目な顔でそう言ったかと思うと、ほんの一瞬のキスをされた。


「…恥ずかしいよ」


潤んだ目で顔を覗き込んでくるから、動けなくなってしまう。


「ベッド行こ?」


全くそんな気分じゃないのに、勢いで頷いてしまった。