数分後、いい匂いとともに渡辺くんがお皿を運んできた。


「昨日の残り物ですけど」

目の前に置かれたのはカレー。
なんだかすごく懐かしい気持ちになった。


「男なんで、こういうものしか作れないけど…お菓子よりはヘルシーですから」


「うん…ありがと」


あまりにも懐かしすぎて、少し泣きそうになる。


「あ…苦手でした?」


「ううん、そうじゃなくて。
こういう典型的な家庭料理があまりにも久しぶりだったから…」


そう言うと、渡辺くんが笑顔になった。


「秋本がうちに来ると、こういうものばっかり食べたがるのも納得ですね。
多分、本人としては千絵さんに作ってもらいたいんでしょうけど」


…そうだったんだ。


「とりあえず、冷めないうちに食べてくださいよ。
ビールは俺が頂くんで」


いただきますを言って、カレーを口に運んだ。


「おいしい」


思わず言葉になってしまう。


「よかった」


それを見て彼は満足そう。