「おはよー、千代(ちよ)ちゃん」
間延びした口調で私を呼んだのは、幼馴染の日向(ひなた)君。
「おはよう。ちゃんと準備出来た?」
そんな私の問いに彼は、もーバッチリ!と答えた。
けれど目の前の人物は、
1、シャツのボタンが開けられすぎている。
2、ネクタイの位置が下すぎて、している意味が解らない。
3、肩から落ちかけている鞄のファスナーが開いている。
そんな訳だから、どうしてそんな自信満々に返事ができるのかが解らない。
もう服装の事は諦めよう。
「教科書は?間違ってないの?」
鞄から早速落ちたノートを拾い上げた彼にそう尋ねた。
日向君には私以外、学校に友達がいない。
だから彼が教科書を忘れた場合、必然的に私が見せてあげる事になる。
隣の席だし、仕方のない事だけれど、正直見づらいからできる限り避けたい。
因みに彼に友達がいないのは、別に嫌われているからではない。
ただ、怖がられているから。