開いたドアから、鋭い目つきの男子生徒が出てきた。


「……女子は向こうだろ」


中から出てきた彼は、私を見下ろし、かすかに眉を寄せ、目線で外を指しながらそう言った。


「私じゃないの、あの子だから」

こっちも目線で日向君を指すと、今度ははっきりと眉を寄せた。
何か言いたげに、けれど何も言わずに口を閉じた。

面倒そうとか、変な人物だとでも思われたのだろうか。


「……変な勘違いはしないでね」

こういう事をしていると、時々日向君と私が恋人同士だとか思われて変な誤解を受ける事がある。
なのでとりあえずそれだけ伝えると、相手はやっぱり何も言わない。
けれど眉間の皺は取れていた。


私がドアの前から横へ避けると、無言のまま歩き去っていく。




「…………今の、誰か知ってる?」

「え、何、千代ちゃんってあーゆーの好きだっけ?やめときなよー」


日向君に聞いてみると、俺にしときなよーと言いながらニヤリと笑った。
それをスルーしたら、いつも通りと彼自身も流して、いい噂聞かないよーと返ってきた。


「そのよくない噂が知りたいんだけど」

「うん、あのね、……でもちょっと待ってね」


話しかけはじめた途中、何故ここに居たのかをようやく思い出したらしく、無人になったトイレへ入っていった。


私は、どうしてアレが消えたのかを考えながら、再び現れないようにドアの前で日向君を待っていた。