「聡が、結婚相手に、申し分ないヒトなのは分かってる!!

でもね、あたしは、一目惚れ意外にヒトを好きにならないの。

29年一緒の聡に、今から惚れることは絶対ないの!!」

空のグラスをガラスのテーブルに、ほとんど叩きつけるようにして、

先に店を出る。

・・・ああ、寒い。

店の外で、さすがに頭が冷える。

聡は、絶対に『あたり』なヒトだ。

それは、分かってる。

おまけに、何のとりえもないあたしを、好いてくれている。

これ以上のラッキーが、あるだろうか???

いい加減、それを理解する年齢になっている。

それに、観念する年にも。

好きになれなくても『大事なヒト』にはなりえるはずだ。

・・・それでもいいじゃん。

あたしはドアのほうを振り返る。

もうじき、遅れて出てくる聡が現われる。

そしたら、そしたら・・・・