「なあ、玲皆?」

「ぼえ?」
その返事を返されたのは、初めてだ.

「どうにもこうにも、さっきの奴等はどうしたんだ?」

「ああ、あいつらね。あいつらなら身ぐるみ全部破って道に捨てといてやったわよ」

「まさに、悪魔の様な所業だな!」

「私を襲おうとした強姦魔だもの。まだ爪を剥ぎ足りないわ」

「そう言うって事は、もう何枚か剥いだんだな!その自白として受け取るぞ!」

「今頃、自分の頭と眉毛が無い事にも気付くでしょう」

 
段々と、あいつらが心配になってきた。
いや、かわいそうってわけじゃない。(なにしろ強姦魔だからな、男の敵だ!)

だが、もしあいつらが死んでたら、俺も連帯だからな。
中学生でムショはまずいだろ。流石に。

いや、中学生なら少年院か。なら
……

いや、どっちも駄目だろ!!

俺の一人ツッコミが終わり、ふと玲皆のほうを見ると、

玲皆は、そのストレートの長い髪を整え、不自然な位に真っ黒な目をこっちに向け、ただジーッとこっちを見てきた。

「んっ、なんだ?」

「シレン……」

「だからなんだよ」

「ちょっと前の名前で呼び合う件、
あそこで私が凄い緊張してたの分かってしまったか?」

「何故に今その報告を!? 可愛いなおい。
確かにあんなにさらりと名前で呼び会うイベントが終わるとは、思いもしなかったな!」

ちゃっかり、可愛いと言ってしまった。

さっきの件は、自分もドキドキしてたと言うのに。

「私は意外と純情なのよ」

「その発言が純情じゃねぇ!」

「ツンデレ枠も、純白枠も取れるなんて、なんていう使える人材」

「まるで、勇者のようだな」

「私は、天地雷鳴士のほうが好きよ」

「まさか、ドラクエ7の魔法系最終強化の職業を出してくるか!
 おれはゴッドハンド派だがな」


 ああ、こんな会話をしているうちに外も暗くなっていた。


「玲皆。家はどこだ」

「無いわよ」

「そうか、気をつけて帰れよ。…………って 無い!?!?」


おお、俺の突っ込みボキャブラリーに新しい要素が追加された。


「売っちった」

「売っちった。って、親は?」

「疾走しちゃった」

「走ってたのか!?」

「あ、違う。失踪しちゃった」

「何にしろ。いないんかい!」

「まあ、夜の街を渡り歩けば、生活費位なら」

「処女が夜の街を歩くな!! 危なっかしい」

「なら、教会を回りましょうか」

「もう、いいから家に来い! あいにく1人暮らしでなもう一人位ならいけるんだよ」

つい、口から漏れてしまった。……お人好しだ。

「いいわよ。掃除・家事・甘い声でのモーニングコール付きで住んであげるわ」

「願っても無い事だが、最後のは俺の理性のために控えといてくれ」

「じゃあ、決まりね」


こうして、玲皆との不思議な共同生活が始まったわけだが、
このときに来いと言ったのは、お人好しだけじゃないと思う。


俺はこのとき既に、こいつの事を好きになっていたのだ。